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JICA Scholarship Seminar(2007) 体験記

一橋大学
修士課程法学研究科1年
仲本千津


 私はこの度JICA留学生セミナー「Post-war Reconstruction of Okinawa and Peacebuilding」にOPAC(沖縄平和協力センター)のインターン生として2週間、企画・運営に参加させて頂いた。きっかけは、私は現在大学院にて平和構築、中でも紛争後国家における民主主義のあり方と市民社会の関り方を研究しており、今回このセミナーに携わることで、英語によるディスカッションを通して知識を深めるとともに、NPO法人の運営・企画を実際にこの目で確かめたいと思ったからである。
実際インターンシップが終了し振り返ってみると、たった二週間という短い期間ではあったが、中身の濃い、充実した二週間が過ごせたと自負している。国籍、地域を超えた多くの方々との繋がりを実感し、NPO法人がそのような人々の「思い」の上に成り立っていること、そしてその「思い」が原動力となって真剣な議論の中から確かな事業・結果が生み出されていくことを実感した。
 紛争後の国家における再建過程も同様なことが言えるのではないだろうか。対立グループが各々の利益ばかりを念頭においた主張をし、「他者への想像力」と、対話を通して妥協点を見つけようとする努力を拒み続ければ、出来上がった国家も脆弱なものとなる。もちろん言語や宗教、民族といった文化的背景が異なり、それに基づいた価値観も異なる者同士が自己の利益を損なってまで妥協をするというのは、並大抵のことではない。しかし答えが一つと頭ごなしに考えるのではなく、あらゆる角度から問題に焦点をあてていくことで、両者の目的を満たす「第三の結果」が生み出される可能性があることを忘れてはいけない。時間的、予算的制約がある中でいかにこの可能性を活かした対話を行うことができるのか、その葛藤こそが平和構築の過程なのである。この点は、今回8月18日19日の二日間に渡って行われたワークショップの、「イス取りゲーム」において見られた重要なポイントであった。半ば混乱を極めたが、3つのグループが交渉を通して相手の目的を推測していき、3つのグループ全てに利益になることを考えようとした時に初めて問題の「答え」が見つかる、そういったプロセスを実際に理解した瞬間だった。
 ではセミナーを通してこのようなプロセスを理解することが、日々の生活にどう影響を及ぼすのかと言えば、2点挙げられるだろう。まず1点目として、冷静な視点をもって、現状から一歩下がったところから、物事を多面的に見ていくことの重要性を理解するということである。その対象は身近な紛争から(家庭問題など)ニュースを賑わせる政治問題、国際紛争まで、あらゆることに応用が可能なのだ。2点目として様々なインセンティブを得られるということである。例えば、外国人と交流するために英語を話せるようになりたい、平和構築・紛争解決についてもっと知りたい、といったことである。今回のセミナーが参加者たちにとって、有意義なものとなっていたらこれ幸いである。
 このように、社会や住民の認識に対しあるテーマに特化して働きかけを行う、そのような機会を作っていくのがOPACを始めとしたNPO法人の役割であると考えている。例えば今回のセミナーでも取り上げ、沖縄の平和復興を見ていく際に欠かせない米軍基地問題について、外国人からの視点、米国総領事館からの視点、普天間基地が敷設されている宜野湾市役所からの視点など、あらゆる観点からの意見が比較できたところがとても興味深かった。これに沖縄県民からの視点と沖縄県以外の都道府県における日本人からの視点を加えて、ざっくばらんに討議したワークショップも有効な機会であったと考えている。つまり政府と住民の間に入り、物事を多面的に見られる「討議」の場を設けることが、NPOなどの「市民社会」の役割なのである。そして今後ともそういった議論の場を提供していき、沖縄における最も身近かつ深刻な紛争である米軍基地問題について、自発的に考えていくきっかけを提供していってほしいと痛感した。もちろんそこで私にできることがあれば、どんなことでも協力していきたいと考えている。
 最後に今日まで適切にご指導いただいた上杉勇司先生を始め、事務局の清水さん、仲泊さん、そしてワークショップの際にファシリテーターとして参加してくださった、宜保さん、又吉さん、柴田さん、そして色々迷惑をかけたであろうインターン同期の小林さん、原野さん、先輩インターンの清水さん、比嘉さんには、本当にお世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。また来年2月に実施予定の留学生セミナーでも宜しくお願いいたします。