インターン体験記

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インターン体験記

広島大学
法学部法学科4回生
徳重佳史


1.はじめに
 私が沖縄平和協力センター(以下OPACと省略)のことを知ったのは昨年度同様にOPACでインターンをしていた広島大学国際協力研究科の徳光祐二郎氏の紹介によるものであった。私は大学が原爆の惨禍を被った広島という地にあり、また昨年度大学と共に平和に関するシンポジウムを開催し、またその後も平和に関する活動を行ってきたため、平和に関しての興味は深かった。そのような状況の中、徳光氏からOPACのご紹介を頂いたのだった。
 私は実はOPACの実情をそれ程知らないまま来た。OPACは沖縄という地で平和構築に携わっているNPO、という認識のみでOPACでのインターンをはじめる事となった。

2.留学生セミナー
 以上のような浅ましいほどのOPACに対する状況認識で沖縄にやってきたのだが、OPACに足を踏み入れた最初に感じたことは、事務室の狭さであった。昨年度大学の機関でインターンシップをしいたためか、無意識のうちに大学と比較してしまっていた。そんな全くの無知できた私に開催まで1週間を切っている留学生セミナーの準備が一部任せられた。新任の自分にはコピーやデータ打ち込みなどの雑用だけだろう、と高を括っていたのだが、やはりここでも甘かった。突然セミナーの講師陣との詳細な連絡のやり取りを任せられ、慌てふためく間も無く、とにかく目の前に与えられた業務をこなしていった。当初は分からないことも次第に理解できていくようにはなるが、セミナーを一週間後に控えた段階では、状況を把握するのにも限界があった。もう少し早い段階から関わることができていたら、と残念な気持ちがする。

 実際にセミナーが間近に迫っても、状況を十分に認識できていない自分にとっては戸惑いの連続であった。OPACのスタッフがセミナー当日になって一名欠けるという事実もさらに私の不安を増大させた。セミナーに参加する研修生、また提供側のJICAからすれば私の個人的な困惑など関係ないことである。この頃が一番重圧を感じた時期であったといえる。このように物事を始める前には不安がつき物なのであろう。ところがいざセミナーが始まってみれば自分の不安程事態は悲観すべきものではないということに気がつく。なんとかやれる、そういう気がした。もちろん私をそう思わせたのは他のOPACスタッフの存在、JICA側の姿勢、そして研修生の真摯な態度などの諸要因が相まってのことではあるが、自分の気持ちの持ち様一つで状況は危惧すべき程のことでもないということを知らされる。

 研修に参加するに際して私は二つのことを心に決めた。一つは主催側の人間としてこのセミナーを有意義なものにし、参加者に提供する。そしてもう一つは、一つ目の目標を達成するべく主催者側に積極的に貢献をするということだ。確かに私は主催者側の人間ではあったが、私個人の能力・経験などは些細なものに過ぎず、提供できるだけのものはない。それならば自分の現状としては他の重要な主催者側の人がより有意義な講義・ワークショップが出来るようにバックアップすることが大切なのではないか、と考える。ただその際にも自分は何も出来ないのだと卑屈になるのではなく、自分に出来ることは精一杯取り組むようにする。例えば講師が講義に必要なペン・マーカーなどを用意する、休憩中も講義室にゴミが落ちており、参加者に不快な思いをさせないか等、誰でもできるが、この場では自分がすべきであることには尽力を惜しまなかった。また今回のセミナーでは自分は日本で教育を受けてきて、現在は広島の地で学んでいる学生であり、さらに平和に関するさまざまな活動を行ってきているというほかの人には無い長所はあった。それらを留学生に如何に有効に伝えていくかという点について気を配っていた。

 セミナーの内容は、私にとっても大変興味深いものであり、また沖縄の数々の名勝にも訪れることが出来た。特にセミナーの公開ワークショップにおいては沖縄在住の方と留学生を通じて平和教育・基地問題をはじめとする刺激的な示唆が得られた。この公開ワークショップのように多様なバックグラウンドを持つ人々が一つのトピックについて語り合うのは大変に興味深いことである。時にわたしは自分のやるべきことも忘れ、議論に集中してしまった。

留学生セミナーは1週間ほどの短い日程ではあったが、上述したように私個人にとっても有意義なセミナーであった。戸惑うことは数多くあれ、私のセミナーに参加するに当たって打ち立てた目標を達成できたような気がする。

 セミナーが終わった後、セミナーの報告書を作成することになった。報告書では私は謝金の計算をすることになった。しかし、これが難しい。今まで体験したことの無い業務だからということもあり、暗中模索の状態であった。計算を細部まで正確にしなくてはならず、気の張る作業が続いた。セミナーは1週間であったが、事前準備・報告書作成などはセミナーの何倍も時間を費やす作業である。これだけ大変な作業であるからこそセミナーを充実したものに仕上げよう、という主催者の意識の高さがセミナー中に伺えたのかもしれない。だが、私には時間の制限もあり、8月中に沖縄を離れればならなかった。謝金のまとめについては一通り形になったが、他のものに対しては疎かになってしまい残念であった。だが冷静に考えてみればOPACはなんて忙しいところだろう。大学の機関では会場を抑える際や施設訪問の際には主催者である教授側ではなく、彼らを支える事務員がいるものである。一から十まで全てこなさないといけないというのは実に酷なことのようにも思える。しかし、OPAC側の人間にはそれを成し遂げられるだけのもの、つまり情熱というものがあったように考える。何かをしたい、何かを伝えたい、その熱い思いが伝わってくる。でもその情熱がなければNPOの立場を持続するのは困難だろう。しかし、情熱があるからこそやり遂げられるに違いない。

3.さいごに
 最後にまとめとして感想を端的に述べる。まず良かった点としてはNPOの実情を垣間見ることが出来たことである。国際協力について学んでいたこともあり、NPOについて知る機会はあったが、実際に中に入って活動するのは始めてのことであった。また昨年度別の機関でのインターンシップの経験が今回のOPACでも活かせたことで自分の力として認識できたことだ。逆に残念だった点としては期間が3週間と短かったことである。学生であり、また夏季休暇を利用してのインターンシップだったため致し方ない部分もあるのだが、もっと長期的に関わることができたら、と惜しい。その反面、JICAの留学生セミナーに集中することが出来たのは幸いであった。
 また自分がインターンシップをさせていただいたことでOPACの活動の一助となったことを願ってやまない。OPACの方々はJICAセミナーが迫っている大変に逼迫した時期にもかかわらず、私に懇切丁寧に接してくださった。また業務以外でも個人的な進路相談に乗っていただいたり、沖縄についてのフランクな興味深いお話をしてくださったりした。そして業務に取り組む際や今日の問題を考える際にも決して上からの視点ではなく、私と同じ視点に立ち一緒に取り組んでいこうとする姿勢が伺われた。私が3週間充実したインターンシップをさせていただいたのは業務が興味深かったこともさることながら、OPACの方々の心ある人徳によるものと考える。感謝の言葉をあげればきりが無く、これからもご鞭撻・ご指導を受け賜りたい。
最後に繰り返しとなるが、インターンシップという貴重な機会を提供していただいたOPACの皆様に心より深く御礼申し上げる。