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(財)交流協会 助成金事業「沖縄と台湾~北東アジア安全保障の観点から」

沖縄と台湾~北東アジア安全保障の観点から


 在沖米軍プレゼンスの縮小を求める沖縄に対し、在沖米軍を含め同地域に駐留する米軍に安全保障を大きく依存せざるをえない台湾。沖縄と台湾は歴史的・地理的にも近い関係にありながら、互いが抱える安保問題や米軍プレゼンスに対するとらえ方については実はなかなか理解されてきていません。
 OPAC では、沖縄・台湾間の安全保障研究分野におけるネットワークを構築し、北東アジア安全保障における沖縄・台湾それぞれの認識の共有、相互理解を促進すべく、公益財団法人・交流協会の助成を受け「沖縄と台湾~北東アジア安全保障の観点から」をテーマとした台湾・沖縄知的交流事業を実施しています。

 台湾から、閻鐵麟氏(国立政治大学国際関係研究所・安全保障研究センター事務局次長、退役台湾海軍大佐)、周志偉氏(淡江大学助教授)にご参加いただき、OPAC研究員と共に、沖縄と台湾を取り巻く安全保障情勢についての勉強会や意見交換会を開催し、互いの立場について相互理解を深めています。
 12 月には、拓殖大学海外事情研究所の川上高司教授にもご参加いただき、意見交換会を開催しました。尖閣諸島問題や中国脅威論の台頭で、ますます緊迫する日中関係にあって、台湾と沖縄の位置づけと展望について互いに理解を深めることはそれぞれの将来に極めて重要であると考えられるという認識で一致し、今後、台湾と沖縄を信頼醸成の拠点とすべく本事業を継続発展させ、定期的なフォーラムの場として確立していくという目標を設定しました。


 12 月 14 日には、閻氏、周氏を講師に、川上氏をコメンテーターにお迎えし、「北東アジア安全保障~沖縄と台湾」と題した公開セミナーを開催。衆院選挙を 2日後に控えたせわしい折にも関わらず、多くの皆様にご参加いただきました。尖閣諸島の領有権を巡る日中対立の解決が見えない中、また、北朝鮮が「人工衛星」の打ち上げ実験を実施したばかりということもあり、北東アジア安保情勢への関心の高さがうかがえました。閻氏は、主に退役軍人としての視点も踏まえて米軍プレゼンスの役割と展望や、可能性は低いとしながらも台湾有事の際の沖縄に期待される役割等について言及。また、周氏は、台湾の馬大統領が主張する「東シナ海平和イニシアティブ」に言及し、沖縄と台湾間関係の草の根からの深化やソフトパワーの有益な活用によって地域の安定に寄与することができるとの展望を示しました。川上氏は、閻・周両氏によって率直な台湾側視点が提示されたことを評価すると同時に、改めて台湾と沖縄が運命共同体であることが明白となったと指摘。日本側もこの点についてしっかりと理解する必要があり、沖縄の台湾化を回避するためには日本が外交上の判断を誤ってはいけないと強調しました。フロアからは、在沖米海兵隊プレゼンスによる対中「抑止力」や、在沖米軍再編による台湾への影響などの質問が出され、在沖米軍基地問題と台湾との関係について関心が集中していることがわかりました。